生理物質の相互関係

精と気

気は精を生じ、精は気を生じる。
相互転化の関係にあり、精気と呼称される場合がある。

精の気に対する作用

精は気を生じる
精は腎に貯蔵され、絶えず原気を生み出す。
原気は各臓腑に行きわたり、臓腑の気として各臓腑の作用を発揮させる。
精は気の源:精が充足していれば人体の気も充実し満ちあふれ、各臓腑の気も充足する。

精が足りれば気は旺盛 ⇔ 精が不足すると気は衰える
(精虚の患者には気虚の症状が多く見られる)

気の精に対する作用

気は精を生じ、固摂する
気が充足することにより、臓腑の機能も正常に働く。
腎精は先天の精を基礎とし、後天の精の補充により、初めて充実し盛んとなる。

臓腑の機能が正常
 ↓
水穀の精微を化生することができる
 ↓
精は満ちあふれ、腎に流れ込み貯蔵される
(気の充足が精を生み出すための条件となる)

気は精の化生を促進するだけではなく、精を固摂している。
固摂されることで精は充実し、過度に消耗することがない。

気虚になると、精の化生が不足もしくは精を固摂できないため、精虚を招くことがある。

精と血

いずれも水穀の精微より化生される。
精は血を生じ、血は精を生じるという相互転化の関係にある(精血同源)。
滋養や神の維持など、共通する作用がある。

精の血に対する作用

精は血に化生する
精の一部は脈中に入り、血の構成成分となる。
血は水穀の精微から化生・補充されるが、必要に応じ精から補充され、一定の血量を維持している。

血の精に対する作用

血は精を化生する
全身をめぐっている血は、臓腑に精を補充する。
精と血は生理的に密接な関係にあるため、関連して出現することが多い。
血虚から精虚に波及、もしくは精虚から血虚に波及 → 同時に存在する精血不足が代表的な病証。

各臓腑は血に滋養され、正常な生理作用を発揮
 ↓
血が充足し臓腑を滋養することで、精の化生に寄与

精と津液

ともに水穀の精微から化生され、身体を潤す特徴を持つ。
精の不足は津液の不足を伴い、津液の不足は精の不足を伴うことが多い。

気と血

ともに水穀の精微と腎精から化生され、共同で生命活動を維持している。
気と血は生理的にも病理的にも密接な関係にある。

気の血に対する作用

生血・行血・摂血の3つに分けられる。

生血(気は血を生み出す)
気虚が進行すると血虚が起こりやすく、気血が同時に不足する気血両虚が多く見られる。

血 → 脾や腎の機能によって化生される
気 → 脾や腎の機能を発揮させる
気が盛ん → 血を化生する力は強まる
気が不足 → 血を化生する力が弱まる

行血(気は血をめぐらせる)
血は気の推動作用によって、人体をくまなくめぐることができる。
気虚・気滞が起こると血行不良となり、血瘀へと進行することが多い。

気虚血瘀 = 気虚により血を推動できない
気滞血瘀 = 気滞により血が滞りる

摂血(気は血を固摂する)
血は気の固摂作用により正常に脈中を流れ、外に漏れることがない。
気が不足して固摂作用が低下すると、出血が起こりやすくなる(気不摂血)。

血の気に対する作用

気を化生すること、気を赦せることの2つに集約される。

血は気を化生する
血が充足することによって、気の化生も正常に行われる(脾・肺・腎)。
化生に関わる臓腑が正常に機能するためには、血による滋養が不可欠である。

血は気を載せる
気が血中に存在することで、血が体外に散出せず、全身を運行することができる。
出血が起こると、血とともに気も損傷する。

血は気の推動作用や固摂作用によって、脈中を正常に循行できる
 ↓
血と気は一体化している

気と津液

津液は水穀の精微から化生される。
気とともに生命活動を維持するため、生理的にも病理的にも密接な関係にある。

気の津液に対する作用

生津・行津・摂津の3つに分けられる。

生津(気は津液を生み出す)
津液は、飲食物の中に含まれる精微な液体部分が吸収され、化生したものである。
水分代謝に関わる臓腑の機能が充実 → 津液を化生する力が増し、人体の津液は充足する。
脾胃など臓腑の気が不足 → 津液を化生する力は弱まり、津液不足が起こる。

行津(気は津液をめぐらせる)
津液は血と同様に、運行には気の推動作用を必要とする。
余った水分は汗・尿あるいは水蒸気に気化され体外へ排出される。
腠理や膀胱の開闔も気の作用によって行われる。

気虚により推動作用が減弱する
 ↓
津液の運行・排泄の障害が起こる
 ↓
湿・水・飲・疾という病理産物を形成する
(津液の運行・排泄は気の作用である)

摂津(気は津液を固摂する)
気の固摂作用は津液の不要な流出を防ぐとともに、津液の排泄を調節し、体内の水分量を一定に維持している。
臨床においては、気を補うことにより、津液の過剰な排泄を制御する方法がよく用いられる。

気が不足し、固摂作用が低下
 ↓
多汗・自汗・多尿・遺尿・小便失禁などが起こる

津液の気に対する作用

津液は気を生む
気を化生する臓腑(脾・肺・腎)が正常に機能するには、津液による滋潤が不可欠となる。
津液が充足することによって、気の化生も正常に行われる。

津液は気を載せる
津液の運行は脈中でも脈外でも気の推動作用によって行われ、気と津液は一体化している。
津液の過剰な排泄は、気を損傷する。

血と津液

ともに水穀の精微より化生し、どちらも滋潤作用を備えている。
血の粘稠度が増すことにより、血瘀が起こる場合がある。

津液は脈外で気とともに全身を環流している
 ↓
脈中の津液が少なくなると、浸出して脈外の津液がその不足を補う
脈中の津液は、精や営気とともに血を構成する
 ↓
脈外の津液が少なくなると、脈中の津液が浸出してその不足を補う

飲食物の摂取不足や脾胄の機能の減退、大量の発汗、嘔吐、下痢、発熱などで体内の津液が少なくなると、脈中の津液を補充・化生できなくなる。

血虚の患者に間違って発汗させる治療法を行うと、血に化生する津液の量が減少するため、さらに血が消耗する。